政策調査部情報 16号 04.09.07

道立病院(寿都・釧路)の
自治体移管問題で最終交渉を実施!!
(1) はじめに
 昨日(9月6日)連合北海道(要請団:峯後樹雄事務局長他)は、道立寿都病院と釧路病院の自治体移管問題で、4度目の交渉を実施した。両病院の自治体移管問題については、これまで3回の交渉で、「道立病院の自治体移管先にありき」という道の拙速な対応を厳しく批判し、6月の第2定例議会への提案を阻止してきた。第3定例道議会を前に、条例改正案を提案する道と最終交渉を実施した。
 
(2) 寿都町の新たな病院整備計画に、道は「全面協力」と回答
 @道立寿都病院の移管問題では、当初、寿都町は、無床診療所として受け入れを検討していた。これに対し、連合北海道や地域住民は南後志地域全体の医療切り捨てに繋がり、地域医療の後退を招くことから、こうした機能移管は道の役割と責任の放棄であるとの立場で移管に反対してきた。Aその後、寿都町は方針転換を余儀なくされ、道立病院移管の受け入れに当たって、新たな病院整備計画(有床診療所・救急医療体制整備・道立病院と同等の診療科目・医師並びに技術者の確保・在宅サービスの充実など)を明らかにし、道に要望書を提出、支援を要請した。B今回、連合北海道は、「寿都町の要望事項について、財政支援をはじめすべての課題に全面協力」を道に求めた。道は、「必要な財政支援はもとより医師や看護婦など医療技術者の確保。運営面も最大限支援する」と回答した。連合北海道としては、地元自治体の脆弱な財政状況を考えると移管には反対だが、南後志の地域医療の確保に繋がるものとして、この回答を受け止めたい。また、合わせて移管後も「将来にわたって道が責任を果たす」よう求めた。これに対し道は、「誠意をもって対応する」と答えた。この回答を重く受け止め、これを足がかりに、連合北海道は、道行政の責任放棄とならないよう、今後も、政策制度課題として位置付け取り組む。
 
(3) 2年前倒しで道立釧路病院は強行!治療中の患者への経過措置は検討約束
 @道立釧路病院の移管問題では、連合北海道としては、道の道立病院経営計画で2006年度までその存続が位置付けられている釧路病院を2年も前倒しで移管することは、そもそも拙速であると主張してきた。また、釧路病院はセンター病院として役割を担っており、廃止後の結核医療サービスが後退すること。さらには、新しい医療ニーズである終末期医療(ホスピス・緩和ケア)など民間病院では整備しにくい医療分野を政策的に付与し存続すべきであることを求めてきた。A道立釧路病院廃止に、地元の住民・患者から反対と不安の声が広がり、釧路市長も病院存続を求めている。Bしかし、道は、あくまで道立病院を廃止し、その機能を自治体病院に移管する考えに固執した。連合北海道の要請事項、地元要望に対しては、納得のいく回答とはなっておらず不満である。C今回の交渉では、治療中の患者さんの医療に責任を持つことを求めた。道は、患者さんの治療については、その経過措置を「検討する」ことを明確にさせた。
 
(4) まとめ
 連合北海道は、道立病院の廃止に伴う労働者の雇用確保に万全を期すことを求め、雇用問題では、全道庁労組と組合員の意向は最大限尊重されることを明確にさせた。しかし、道は、反対の声を無視して、道立寿都病院と釧路病院の2カ所を地元自治体へ機能移管する条例改正案を第3定例議会(14日開会)に提案する。道立病院は、民間病院がペイしない分野と地域で役割を果たしており、道財政のコスト削減や「財政立て直し」のために、廃止することは許されるものではない。こうした基本認識のもと、道民の生命と健康に関わる地域医療問題について、引き続き政策制度として、「要求と提言」活動に取り組む。
 
(要請事項に対する北海道の回答)

1.道立寿都病院の移管問題について

 道立寿都病院は、寿都町を中心とし島牧村及び黒松内町の南後志3町村を医療圏域として、夜間や休日などの時間外や救急患者の診療を行い、地域住民に密着した医療を提供してきました。よって、寿都町に移管されたとしても、その医療圏域や役割は変わらず、「寿都町だけの医療施設」とはなりません。
 北海道は、寿都町に道立病院を移管して、役割終了という対応ではなく、従来どおり南後志の地域医療に責任をもつ姿勢で寿都町への移管に向けた具体的対応を強く求めます。 
(1)移管にあたっての寿都町の要望事項について、財政支援をはじめすべての課題が  達成されるように全面協力すること。特に、移管後の診療体制(ベッド数・医師数  ・看護師などの配置数等)と科目、夜間・休日の救急体制等の確立のために万全を  期すること。
(2)寿都町の財政基盤は極めて脆弱であり一定期間の道の支援策以降についても、道  の全面的な支援体制が不可欠です。移管する寿都町への全面支援とともに、黒松内  町、島牧村という南後志の地域医療を守っていくために、積極的に関与していくこ  とを明確に意思表示すること。
(3)寿都道立病院の労働者の身分保障と新たな働く場を確保すること。

 
●回答
1.(1) 寿都町からの要望事項への対応についてでありますが、寿都町においては、
7月26日開催の町議会地域医療対策特別委員会において、寿都町長が、町議会での議論や住民説明会等における住民の意向を踏まえ、救急や入院にも対応できる町直営の有床診療所として、道立寿都病院の移管を受け入れるとの意志表明を行い、議員全員の承認が得られたところであります。また、8月2日から5日まで、町内4箇所において道立病院の町移管について住民説明会を開催し、町の方針を説明後、8月6日に町から道に対して要望書の提出があったところであります。
 町の要望事項の主なものとしては、@新たな有床診療所の整備や運営費の補填、A医師や看護師など医療技術者の確保、B高規格救急自動車や救急へリポートなど救急体制の整備、C保健センターや小規模・多機能施設などの総合的な保健、福祉対策の拠点整備等への財政支援のほか、D道立病院の土地や建物などの無償譲渡や、保健、医療、福祉の専門知識を持つ道職員の派遣などとなっております。
 新たな診療所については、医師を複数配置し、現道立病院が担っている内科、外科はもとより産婦人科や精神科の診療科目を引き続き標榜するとともに、夜間・休日における救急対応も行うこととしております。
 医師等医療技術者については、現在、医師派遣に実績のある医療法人に対し、寿都町とともに派遣要請を行っているところであり、先般、8月12日には同法人の理事長が寿都町を視察し、また、明後日(8日)には、寿都町議会が、この医療法人の運営する医療施設を視察する予定であるなど、具体的な取り組みが進められているところであります。
 道としましては、町の要望や考え方を十分尊重し、これらの体制整備に必要な財政支援はもとより、医師や看護師など医療技術者の確保に向けて全面的に協力するなど、運営面についても、最大限支援して参りたいと考えております。
 
1.(2) 寿都町への支援などについてでありますが、寿都町からは、道立寿都病院の移管に当たって、有床診療所に対する整備や運営支援とともに、住民の健康づくり対策や高齢者福祉対策など、保健・医療・福祉分野の多岐にわたって要望をいただいたところであります。
 このため、道としては、道立病院の移管事務を円滑に進めることはもとより、移管後においても町の保健福祉施策の充実が図られるよう、必要な知識を有する道職員の派遣や町と道との職員交流を進めるなど、人的な支援にも努めて参りたいと考えております。
 新たな診療所においては、救急患者への対応のほかに、産婦人科、精神科など専門的な医療を担うこととしておりますので、道としても、こうした医療が南後志地域において安定的に確保されるよう、医師の確保などについて全面的に協力して参りたいと考えております。
 

2.道立釧路病院の移管問題について

道立釧路病院の周辺地域の多数の市民、患者・その家族、釧路市長が道立釧路病院の存続を望んでいます。終末期医療をはじめ新たな役割の付与などについても十分検討し、「まず移管ありき」という拙速な姿勢を改める必要があります。

(1)釧路市立病院への移管をめぐって、@釧路市側の受け入れ体制(市立釧路総合病  院の整備改築)が整っていない。A結核医療については、市立釧路病院に10床を  整備し移管するとしているが、広域な道東地域での結核医療としては不十分であり、  引き続き道立病院の医療実績と技術を活用し、その機能を存続すべきである。B道  立病院のある地域住民や釧路市長の存続の要請が強い。C道の経営計画でも200  6年度までは存続が位置づけられていること。等々の解決すべき課題があります。
   よって、2年も前倒して2005年度からの拙速な移管は見直すこと。
(2)終末期医療について未だ実施している病院がない道北・道東地域において具体化  するために道としての役割を果たしていくことを明示すること。
(3)釧路道立病院の労働者の身分保障と新たな働く場を確保すること

 
●回答
2.(2)道立釧路病院の移管についてでありますが、釧路市においては、市立釧路総合病院の増改築整備に併せて道立釧路病院の医療機能を受け入れることとし、循環器疾患用結核患者受け入れのための病床や外来診察室を新たに整備することとしております。
 さらに、地方センター病院としての役割を発揮するため、特殊な疾病や高度・専門医療に対応できる医療機能の充実を図ることとしております。
 道立釧路病院の存続については、これまで、関係団体や地域住民の方々から提言や要請をいただいたところであります。
 その一方で、地元釧路市や周辺自治体で構成する釧路地方総合開発促進期成会からは、
市立釧路総合病院への円滑な移管と体制整備のための財政支援について、要望をいただいているところであります。
 道としましては、これまでの釧路市との協議を踏まえ、道立病院の医療機能が円滑に継承されるとともに、地域医療の充実が図られるようこれらの体制整備に必要な財政支援を行って参りたいと考えております。
 また、これまで道立釧路病院を利用されている患者の皆様が移管後も適切な医療を受けられるよう、道としての支援方法を検討して参りたいと考えております。 なお、機能移管の時期につきましては、釧路市と協議を重ねてきた結果、市立釧路総合病院の増改築計画にあわせ円滑に機能移管が図られるよう早期に診療体制を整えたいとの釧路市の意向も踏まえたものであります。
 
2.(2)終末期医療についてでありますが、終末期医療として、ホスピス・緩和ケアの推進を図るためには、国の施策・制度に負うところが大きいことから、道としては、平成17年度の国費予算に関する要望や国の保健医療福祉施策に対する要望において、「ホスピス・緩和ケア推進対策の充実」を新たな要望項目とし、
 ・実施医療機関の施設設備の整備や研修等に係る地方財政措置の創設
 ・診療報酬の一層の充実
 ・医師や看護師の教育、養成機関におけるホスピス・緩和ケア教育の充実
 について要望を行ったところであり、引き続き国に働きかけてまいりたいと考えております。また、緩和ケアを担う人材育成につきましては、(社)北海道看護協会において各種研修を実施しているほか、衛生学院や道立高等看護学校でのカリキュラムへの一部組み入れにより対応しているところであります。例えば衛生学院のプログラムにおいては、
  「基礎看護学方法論V」〜”ターミナルケアと看護”の講義 12時間
  「成人看護学方法論U」〜”ターミナルケアの必要な人の看護”講義・事例検討 8時間
 道としては、今後とも、制度改善など緩和ケアの推進に向けて、一層の努力を重ねてまいりたいと考えております。
 
2.(3)最後に、道立寿都病院及び釧路病院の職員の処遇についてでありますが、今後、職員の方々の意向を十分尊重しながら、対処してまいりたいと考えております。
 

回答に対する連合の指摘

1.寿都移管問題の(2)の項目

  寿都町では「道の財政支援策が打ち切られたら、診療所は財政難でやっていけない」という声が既に出されている。南後志の地域医療を守っていくためには、一定期間の道の支援策以降についても、道の全面的な支援体制が不可欠です。回答で「全面的に協力」と示されたが、誠実に履行されるように、連合北海道、そして、南後志の地域医療を守る会(寿都・黒松内・島牧の3地区連合)としっかりと見守り、要請し続けていく。

2.釧路移管問題の(1)の項目

 道立病院の存続に関する要請に対して、「患者が移管後も適切な医療を受けられるよう、支援方法を検討していく」という前向きな回答が出された。患者さんは、約1,600人いると聞いている。釧路市立総合病院の診療がスムーズに受けられるには相当の時間やフォロー策が必要。全道庁との協議も含めて、フォローアップ策を確立し実施されたい。
 
●指摘に対する再回答
 ただいま、数点、ご指摘をいただきました。南後志地域の医療の確保や釧路病院の患者の皆さんが適切な医療を受けるための検討につきましては、道として、誠意をもって対応して参りたいと考えております。また、職員の方々の処遇につきましては、意向を十分尊重しながら、対処して参りたいと考えております。
以上